【詩】けのび

夜の深いところ
窓から外を見れば
街の灯が
余剰な仕事を
ぽつぽつがんばっている
だがしかし
同型生物の気配は
触角にかからない
いびきひとつ
歯ぎしりひとつ
この部屋まで届かないのは
いったいどうしたことなのだ
もしや
わたしを置いて
みなさん
この街を脱出してしまったのですか
その理由としては
街路樹が臭いとか
歩道が狭いとか
不良が多いとか
色々と思いあたることはある
あるのだけれども
実はこのわたしに問題があるのではないかと
ありえないことではないが
ありえないことではない
ありえないことでは

「わたしの何がいけないのか何かいけないことをしただろうか?」

そんなことを考え始めると
脳内が泥濘に塗れて
神経だけが尖って

じっじじじじじ じじじっじじ
じっじじじじじ じじじっじじ

毛の
のびる音を聴く
これだけがリアル中のリアルなのだ
臭い街路樹とか狭い歩道とかどうしようもない不良とか
どうしようもないわたしとか
そんな些末な諸々は
収納ボックスにぶちこんで
フタッとふたをして
ベッドの下
の奥の奥の奥の最奥に
埃まみれで放置しておけばいい
のではないだろうか
いいじゃないか
もう

じっじじじじじ じじじっじじ

わたしはじっとして
それだけでいて
夜は明ける
なので


(詩/早乙女ボブ)

【詩】D黒A

少女の
ちいさな頭部
から垂れる
  揺れる

 の先端から
産まれ落ちた
甲虫
楕円形として
虹色に耀き
宇宙を夢見る
     一瞬、
記憶が
 (我々は)  (いったい)
 (どこからきたのだろうか)
生意気な者たちの
縄張りに
みちて
 「わたしはいつも」
 「世界の均衡」
 「に、ついて考えていました」
        「ね」「です」
朝食のあと
漆黒の線が
拡大鏡の中
支配して
支配されて
いく


(詩/早乙女ボブ)