【詩】あわいねがい

やさしいひとと
やさしいごはんを
たべたい
場所はどこでも
いいのだけれど
たとえば
住宅街の片隅に
ひっそりとある
ちいさなレストラン
キャンドルの揺れる
窓際のテーブルで
家庭的なディナーをたべて
まろやかなワインをのんで
何か
やさしい出来事を
ゆっくりと語り合う
けっして
戦争や
殺人事件や
芸能人のゴシップや
政治家のスキャンダルなんて
そんなものは
ちらとも出てこない
そうしているうちに
もう
まったく
やさしいきもちになって
ただただ
この時が
いつまでも
続くようにと


(詩/早乙女ボブ)

【詩】猫背の太陽

僕も君も
毎日大変で
もやもやたくさん
でも今は
吹き飛ばすような
笑い声
笑い顔
生ビールと
串カツ、串カツ
駅の改札でさよなら
またねと言って
後ろ姿は
少し猫背

(詩/早乙女ボブ)

【詩】死んだことある?

【死にログ】
ジャスパー墓子さんのレビュー
評価★★★★☆

友達にすすめられて、ついに……!
逝ってみました!
最初はすごく苦しくて、
「やっぱやめれば良かった」なんて
彼氏もグチグチいってたんですけど、
結果的には大成功!
ふたりできもちよくなれました~。
星五つにしたいところなんですけど、
三途リバーのスタッフさんの態度が
ちょっと嫌なかんじだったかな?
でもでも!気持ち的には★★★★★
ですっ☆ミ

僕があまりに
辛気臭い顔して
不吉な話ばかり
するものだから
そういうこと言ってると
ほんとに死んじゃうよ?
友人にひどく心配された

ものすごいことなのだけれど
『死んだことのある人はいない』
それはまったくもって
おそろしくもあり
なんとかしたくて
ご先祖たちは
宗教を作った
のではないだろうか
百年くらい経ったら
死の不可思議さは
完全に解明されて
パスポートがあれば
逝ったり来たり自由自在
そんな時代が来るのかもしれない

しかし
どんなに文明が進んで
死の恐怖から解放されても
生きることへの恐怖
存在することへの不安
失いたくない気持ちは
尽きることがないだろう
いつの時代も
多くの人々が
明日を思って眠れずに
布団の中で震えるしかなくて
そう
今のこの
僕みたいに


(詩/早乙女ボブ)

【詩】詩汁

切り離されて
固まりきった想いが
ぎゅっと
ドリップされる
肉と骨は痺れ
視界もぼやけている
が、
エキスは指先から
ぽたり、ペンを伝い
文字を造り
詩を描く

(詩/早乙女ボブ)

【詩】忘失郷

わたしには
ふるさとなど
ないのですから
きっぷの流れる日
おし合いへし合いに
巻き込まれる心配は
ないのでございます

ふっと窓の外を見れば
青すぎるほどの
青空


(詩/早乙女ボブ)

【詩】蟻

こんなしょぼくれた
木造アパートの一室に
這い込んできたりして
一体どうしたのですか
残念ながら
ご覧の有様なので
何もお出しできません
屋根と壁はありますが
それとてもただ
あるというだけでして
出入り自由でぺらぺら
穴だらけの板なのです

それでも
激しい嵐の日を
生命を持つ確かな存在と
共に過ごすというのは
心強いものがあります
強風に部屋は揺れ
天井からは
雨水が滴り落ちて
この世界が
崩れ去るのであれば
いったい何処へ
逃げたらいいのでしょう
これほど小さな
あなたと
わたしは

(詩/早乙女ボブ)